境線拠点無線式列車制御システム

JR境線で拠点無線式列車制御システムが2015年10月4日に導入されています。

・従来のATSや軌道回路、信号設備はそのまま使用している。ATACSやATS-P(R)とはことなり、特殊自動閉塞の一部を自動化したもの、というのが正しいと思われる。
・無線通信には無線局免許が必要ない2.4GHz帯が使用されており、また無線通信も主要駅・交換駅等の近傍のみとなっている。
・列車位置検知は無線測距で行い、列車位置検知のための車両改修や地上子追加は行われていない模様。ATACSなどの車上装置での演算ではない。
・これまで始発駅・途中駅などで車載器による出発要求・到着操作を行っていたが、新システムでは始発駅での車載器IDと列番の紐付け操作のみを行い、その後の出発要求・到着操作は自動で行われ、運転士による操作は不要となった。(進路設定・閉塞設定/解除は中央装置で行われる)
拡張機能として、ATS-Dxと接続した場合に踏切防護機能も実装できる。













※参考文献
・JREA:「拠点無線式列車制御システム」(2012年8月号)
国土交通省:地方鉄道向け無線式列車制御システム技術評価検討会 配付資料(鉄道:地方鉄道向け無線式列車制御システム技術評価検討会 - 国土交通省)
鉄道総合技術研究所:フィールドレポート「境線の電子閉そく装置」(https://bunken.rtri.or.jp/doc/fileDown.jsp?RairacID=0004006471)
日本信号:「拠点無線式列車制御システム」(https://www.signal.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/04/%E2%91%A1%E6%8B%A0%E7%82%B9%E7%84%A1%E7%B7%9A%E5%BC%8F%E5%88%97%E8%BB%8A%E5%88%B6%E5%BE%A1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0.pdf)

今後の更新について

平素より「かまてつのページ」にごアクセスいただき、ありがとうございます。

昨今の管理人の事情や、首都圏での列車無線デジタル化がひと段落したこともあり、今後の主な更新計画についてお知らせします。

・デジタル列車無線特集について
 首都圏のデジタル化がほぼ終了したことから、現在手付かずの東武鉄道東急田園都市線大井町線の更新をもって積極的な更新は終了します。東葉高速線は取材しない予定です。今後についてはJR東海在来線デジタル化・東海道新幹線で導入予定のミリ波列車無線、京王に動きがあればその動向、私鉄各社のアプリケーションの使用開始後、その内容について各社間の差などをまとめたいと思いますが、時期は未定です。その他のJR・私鉄については関西大手含め余力があれば、となります。

無線式列車制御システムについて
 今後はこちらをメインに更新します。と言いつつも、なかなか資料が無い、ブラックボックスの部分が多い、国内の初研究であったCARAT(Computer And Radio Aided Train control system)も読み解かなければならない、など課題が山ほどあるので内容が薄っぺらくなりそうです。極力頑張ります。

・その他
 その他のコンテンツは細々と更新していきます。twitterのツイートも増やしたいと思います。

以上。

東京メトロ防護発報機能不具合に関する補足


2022年9月16日に、東京メトロより「【お詫び】千代田線綾瀬駅北綾瀬駅ワンマン運転列車における防護発報機能の不具合について」のプレスリリースが発表され、"千代田線綾瀬駅北綾瀬駅間のワンマン区間において、防護発報機能の不具合があったことが判明"したと発表しました。

ネット上で非常発報と防護発報について混同されている方が結構いらっしゃるので、補足します。

鉄道と電気技術 「講座 デジタル列車無線(7)~公民鉄道デジタル方式列車無線(その2)~」において、以下の記載があります。
機能面として、非常発報は「列車無線操作盤または制御器の操作により、規定の停電区間のき電停止要請を電力管理システムに対し伝達する」、防護発報は「列車無線操作盤または制御器の操作により、規定の発報区間に対し防護発報信号を伝達し、同時に規定の停電区間のき電停止要請を電力管理システムに対し伝達する」とあります。

東京メトロは銀座線を除き、現在アナログの誘導無線(IR)と空間波デジタル列車無線(D-SR)を併用しており、非常発報・防護発報共に、列車同士直接無線通信を行う直接式では無く、列車または駅から送信された信号を基地局を介して規定の区間に送信する間接式を採用しています。(※銀座線はD-SR移行済み)
今回は、基地局の設定誤りとあることから、列車側で防護発報を送信しても介する基地局から他列車へ送信がなく他列車が防護発報を受信できない事象が発生していたと推測されます。
なお、発表されたプレスや報道を見る限り、非常発報はきちんと機能していたことから、仮に異常事態が発生したとしても、非常発報の操作により他列車を問題なく停止させることはできたと思われます。(よくある軌道内転落、触車事故等において、JRなどは防護発報しますが、メトロなど特に地下鉄では非常発報を送信します。)

プレスリリースに「ワンマン運転時に必要な機能である防護発報」とありますが、上記資料において、「列車分離事故に備え、前後運転台に搭載された列車無線車上局本体同士を接続する前後引通し線の導通状態を相互監視し、切断を検知すると自動的に防護発報を行う機能を備えている。」とあります。このことから防護発報機能は、ワンマン運転時に後部車両が分離し、誰も防護できずに追突または衝突することを防ぐ目的で導入されている可能性があります。(このあたりは憶測の領域になりますので、間違っていましたらご指摘頂けたらと思います)
ワンマン運転を行う各線では導入されているものの、ワンマン運転が無い銀座線1000系では準備工事となっています。

参考文献: