東京メトロ防護発報機能不具合に関する補足


2022年9月16日に、東京メトロより「【お詫び】千代田線綾瀬駅北綾瀬駅ワンマン運転列車における防護発報機能の不具合について」のプレスリリースが発表され、"千代田線綾瀬駅北綾瀬駅間のワンマン区間において、防護発報機能の不具合があったことが判明"したと発表しました。

ネット上で非常発報と防護発報について混同されている方が結構いらっしゃるので、補足します。

鉄道と電気技術 「講座 デジタル列車無線(7)~公民鉄道デジタル方式列車無線(その2)~」において、以下の記載があります。
機能面として、非常発報は「列車無線操作盤または制御器の操作により、規定の停電区間のき電停止要請を電力管理システムに対し伝達する」、防護発報は「列車無線操作盤または制御器の操作により、規定の発報区間に対し防護発報信号を伝達し、同時に規定の停電区間のき電停止要請を電力管理システムに対し伝達する」とあります。

東京メトロは銀座線を除き、現在アナログの誘導無線(IR)と空間波デジタル列車無線(D-SR)を併用しており、非常発報・防護発報共に、列車同士直接無線通信を行う直接式では無く、列車または駅から送信された信号を基地局を介して規定の区間に送信する間接式を採用しています。(※銀座線はD-SR移行済み)
今回は、基地局の設定誤りとあることから、列車側で防護発報を送信しても介する基地局から他列車へ送信がなく他列車が防護発報を受信できない事象が発生していたと推測されます。
なお、発表されたプレスや報道を見る限り、非常発報はきちんと機能していたことから、仮に異常事態が発生したとしても、非常発報の操作により他列車を問題なく停止させることはできたと思われます。(よくある軌道内転落、触車事故等において、JRなどは防護発報しますが、メトロなど特に地下鉄では非常発報を送信します。)

プレスリリースに「ワンマン運転時に必要な機能である防護発報」とありますが、上記資料において、「列車分離事故に備え、前後運転台に搭載された列車無線車上局本体同士を接続する前後引通し線の導通状態を相互監視し、切断を検知すると自動的に防護発報を行う機能を備えている。」とあります。このことから防護発報機能は、ワンマン運転時に後部車両が分離し、誰も防護できずに追突または衝突することを防ぐ目的で導入されている可能性があります。(このあたりは憶測の領域になりますので、間違っていましたらご指摘頂けたらと思います)
ワンマン運転を行う各線では導入されているものの、ワンマン運転が無い銀座線1000系では準備工事となっています。

参考文献: